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福井地方裁判所 昭和57年(行ウ)6号 判決 1984年9月28日

原告

奥田茂生

右訴訟代理人

谷内文雄

被告

福井県知事

中川平太夫

右訴訟代理人

金井和夫

外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判<省略>

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  福井県は、県営土地改良事業である丸岡西部地区圃場整備事業(以下「本件改良事業」という。)を施行し、原告は、本件改良事業地域内に土地を所有し、土地改良法(以下「法」という。)三条に規定する資格を有する者(以下「三条資格者」という。)である。

2  昭和四三年一〇月一日から同月二四日まで縦覧に供された本件改良事業計画(以下「当初計画」という。)では、土地改良法施行規則(以下「規則」という。)一四条の二第一項三号の主要工事計画及び同条二項三号の計画図その他本件改良事業に関する図面において別紙図面の当初計画線のとおりの道路(以下「当初計画線」という。)が計画されていたがその後、何らの手続も経ることなく当初計画が変更され、昭和四六年一二月一〇日ころ、同図面の計画変更線のとおりの道路(以下「計画変更線」という。)の建設工事が完成した(以下この事実上の工事を「四六年変更」という。)。

3  被告は、昭和五一年一月三〇日、当初計画についての変更(以下「五一年変更」という。)計画及び換地計画(以下「本件換地計画」という。)を決定し、変更計画については同日から同年二月二三日までの間、換地計画については同月二日から同月二六日までの間それぞれ縦覧に供された。

4  五一年変更計画の変更理由書1区画整理(2)道路工の項及び末尾には、

イ 延長増当初延長 三七、八三〇m

変更〃 四一、四七四m

増 三、六四四m

上記理由により事業量、事業費の増額となつた

と記載され、また、第三章土地改良事業の基本計画3主要工事計画概要(1)区画整理事業道路工の項には

幹線(八、一二〇)m   四、七一〇m支線(二九、七一〇)m 三六、七六四mと記載されており、これを添付図面において新旧対比すると、四六年変更でなされた当初計画線の変更が五一年変更における主要工事計画の変更の一部として公告、縦覧されたことが明らかである。

5  しかるに、主要工事計画である当初計画線の変更には法八七条の三第一項所定の変更手続が必要なことはいうまでもなく、そのほか具体的工事に至るまでには法八九条の二所定の換地計画を定め換地処分をするか又は少なくとも一時利用地の指定をすべきものであるのに、昭和四六年においてはこれら何らの手続もとられることなく、事実上工事が完了していたものであるから、当初計画線の変更手続が違法であることは明らかである。

6  そこで、原告は、昭和五一年三月四日、五一年変更計画に記載された当初計画線の変更(四六年変更部分)につき、

イ 地マ係マ関係者の法定の同意を得ていないこと。

ロ 関係住民の道路利用に不便であること。

ハ 関係区画内の農地が細分化され変形すること。

ニ 事業費が増大すること。

等を理由として、被告に対し五一年変更計画に異議申立てをし、併せて本件換地計画についても、換地計画は土地改良事業の性質上必要あるときに定められるものであり(法八九条の二第一項)、道路の位置、形状を無視した換地図も各筆換地明細もあり得ないから、道路の位置形状が是正されるべきときは当然換地計画も是正されるべきであるとして異議申立てをした。

7  被告は、右異議申立て中の変更計画に対する異議申立てにつき、昭和五一年四月三日付でこれを却下する決定をなしたが、右却下決定は昭和五七年三月二六日福井地方裁判所が同裁判所昭和五一年(行ウ)第三号異議申立却下処分取消等請求事件(以下「前件」という。)につき言渡した判決によつて取消されたため、被告は改めて昭和五七年九月二日付で原告の変更計画及び換地計画の双方に対する異議申立てにつき、別紙決定書のとおり、いずれも理由がないとしてこれを棄却する決定をなし(以下「本件決定」という。)、右決定は同月三日、原告に送達された。

8  しかしながら、本件決定は、何ら根拠もなく法八七条の三第一項所定の変更手続を要するのは主要工事計画等のうちの重要な部分を変更する場合に限られ、当初計画線を計画変更線とした変更はこれに該らないとし、また、当初計画線が町道八ツロ儀間線の機能交換による道路であり、現に計画変更線は利用者がなく、まつたく無益な道路であることを無視して、当初計画の変更が適当であつたとするなど明らかに判断を誤つたものである。

よつて、四六年変更をその内容の一部とする五一年変更は明らかに違法であるのに、原告の五一年変更及び本件換地計画に対する異議申立てを棄却した被告の本件決定は誤りであること明白であるからその取消を求める<以下、省略>

理由

一請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。

二そこで、被告の主張につき判断する。

本件換地計画に対する原告の異議は、五一年変更計画が違法であることを前提とするものであるから、まず、五一年変更計画について判断するべきところ、原告は、四六年変更が手続的にも内容的にも違法であり、五一年変更は右四六年変更をその内容の一部に包含するものであるから違法である旨主張するので、以下この点について判断することとする。

三まず、四六年変更の手続につき検討する。

四六年変更は、主要工事計画に係るものであるが、その変更につき、あらかじめ法八七条の三第一項の手続がなされていないことは、当事者間に争いがない。

この点につき、被告は、右手続が必要とされるのは主要工事計画等のうちの重要な部分を変更しようとする場合に限られ、その要否の判断は国の行政指導により本件取扱要領を基準としてなすべきものであつて、支線農道の位置、延長などの一部を変更したにすぎない四六年変更は、変更手続を要しないものである旨主張する(別紙決定書「決定の理由」一(一)参照)。

しかしながら、主要工事計画の変更である限り、法令上は所定の変更手続を経ないでよいとする根拠は何ら存しないから、被告の右主張は失当といわなければならない。

すなわち、法八七条の三第一項によれば、県営土地改良事業の事業計画について「土地改良事業の施行地域その他省令で定める重要な部分」を変更しようとする場合には、変更後の計画の概要等の公告、三条資格者の三分の二以上の同意等の手続をとらなければならないものとされ、右の「省令で定める重要な部分」とは、規則六一条の七により同規則三八条の二各号掲記のものとされ、その一号は「主要工事計画」と規定している。

そして、右にいう「主要工事計画」が、法八七条二項、八七条の二第六項、七条三項、規則五八条、六一条の六、一四条の二の規定により土地改良事業計画の一環として定められる主要工事計画とは別異のものを意味すると解することはできず、法令上、計画変更手続との関係で「主要工事計画」をさらに限定しようとする規定は何ら存しないのである。

また、本件取扱要領は、本来裁判規範たりえないものであるうえ、原本の存在及び成立に争いのない甲第三号証の八によれば、本件取扱要領は事業計画の変更のうちあらかじめ地方農政局長の審査を受けるべき範囲を定めたものであることが認められることに照らすと、右取扱要領に準拠した手続がなされたからといつて法定の計画変更手続を省略できるものではないから、結局、本件取扱要領は被告の主張の根拠とはなりえない。

四次に、被告はこの点に関して、計画と現実の工事との間に若干の異同が生ずることは事実上避けられず、そのたびに法定の計画変更手続を要求するのは非現実的で事業の遂行を損うから、物理的にでなく価値的に「重要な部分の変更」をとらえて変更手続の要否を判断すべきであるとし、その基準として本件取扱要領を機能させ、四六年変更はこれに該当しないから計画変更手続を要しないとも主張する(被告の主張2(四)ないし(六))。

右主張は明白を欠くが、その趣旨は、四六年変更は主要工事計画に関するものであつても法定の変更手続を要する「変更」に該当しない旨の主張とみることができる。

そこで、法八七条の三第一項にいう「変更」とはどのような場合をいうかにつき検討するに、土地改良事業における事業計画は事業の実施の基準となるものであり、以後実施される事業がこの計画に基づかなければならないことはいうまでもないが、事業の実施過程で生ずる様々な技術的理由等によつて、事業計画と現実の工事との間に多少の相違が生ずることは当然予想しうるところであり、ごく些細な相違についてまですべて逐一法定の変更手続を要するときは、事業の実施に重大な支障となることに照らせば、法がすべての場合に変更手続を要求しているものとはとうてい考えられず、計画の同一性を損わず、三条資格者の利益を害することのないような内容の変更であれば、その変更は、法八七条の三第一項にいう「変更」には該らないものと解するのが相当である。

そして、右の判断にあたつては、当該事業計画の変更が当初の事業計画の目的、態様等その内容に及ぼす影響、当該変更の原因が当初の事業計画に内在するもので三条資格者の当初の事業計画に対する同意が当然当該変更をも許容するものと認められるか、それとも、当該変更の原因が当初の事業計画では予想しなかつた対外的な事情の変化により生じたもので三条資格者の当初の事業計画に対する同意が当該変更を予想したものとは認められないものか等の観点から、具体的事情を総合的に検討したうえで当該変更が計画の同一性を損わないものか、三条資格者の利益を害しないものかを慎重に判断すべきである。

これを本件について以下に検討する。

まず、前記当事者間に争いのない事実によれば、四六年変更は、当初計画線の位置が多少移動したとか、道幅に多少の増減が生じたとかいうような場合とは異なり、当初計画線自体が維持されず、これと重なることのない計画変更線が新設されるという内容のものであつて、右変更は支線農道に関する変更ではあるが、本件事業が圃場整備のためのものであることを考えると、右変更が重要でないということはできない。また、変更に至つた原因は工法や地質等の技術的理由とは関係がなく、後に認定のとおり、建設省の道路工事という対外的事情の変化による影響を受けたものであり、右事情の変更は、当初計画時には予想しえなかつたものである。したがつて、当初計画に対する三条資格者の同意のなかに四六年変更が包含されているとは、到底認めることができない。

右によれば、四六年変更は、変更の前後における計画の同一性自体に疑問があるばかりでなく、右のような後発的、対外的な事情変更の影響を受けて事業計画の変更を余儀なくされるに至つた場合こそ、いかなる変更をすべきかにつき三条資格者の意見を反映させるためにも、計画変更の手続を履む必要があるというべきであるから、三条資格者の保護の観点からも、計画変更手続が必要な「変更」に該当するものと認めるのが相当である。

したがつて、四六年変更は、法八七条の三第一項の主要工事計画の「変更」というべきであるから、この点からも、四六年変更につき計画変更手続を不要とする被告の主張は、採用できない。

五以上のとおりであつて、四六年変更については、法八七条の三第一項の手続の履践が必要であるところ、その手続があらかじめなされていないことは、前記のとおり当事者間に争いがない。

ところで、被告は、右の瑕疵は五一年変更の計画変更手続が履践されたことによつて治癒された旨主張するので、次に、この点につき検討する。

法八七条の三第一項は、事業計画の変更について「あらかじめ」変更計画の概要等を公告して三条資格者の同意を得ることを要するものとしているが、法八七条の三第六項が法八七条八項を準用していることからすれば、法は、本来、工事が先行し変更手続が事後的になされるという状態を予想していないものといわざるをえない。しかしながら、法八七条の三第一四項が、利害関係人の権利又は利益を侵害するおそれがない場合には法八七条五項から七項までに規定する手続の省略を許していることに照らすと、法八七条の三第一項は、主として三条資格者の利益保護の手続であるとみるのが相当である。そうだとすれば、先行した工事が適法となる途が全くないというのでなく、事後的にであつても右の利益保護のための変更手続が履践され、三条資格者がこの間の事情を知悉したうえでこれに同意を与えたならば、先行工事を適法とみることについて実質的な弊害は生じないのである。したがつて、計画変更手続を経ずしてなされた変更工事は、事後にその計画変更手続が履践されることによつて手続的には適法となる余地があるものと解するのが相当である。

そして、<証拠>を総合すると次の事実が認められる。

1  五一年変更手続は、昭和五〇年一二月一五日から同月一九日まで、坂井郡丸岡町役場の掲示場に変更計画概要書が掲示されて公告され、右公告につき、三条資格者総数四五四名のうち原告を含む四四一名が同月二五日までに同意をした。そこで、専門技術者の調査報告に基づき審査した結果、計画変更が妥当と認められたので、昭和五一年一月三〇日から同年二月二三日まで、前記丸岡町役場において変更計画書が縦覧に供された。

2 右手続の際の変更計画概要書、変更計画書には、当初計画以後のすべての変更が含まれており、四六年変更はじめすでに変更工事が完成している部分と未工事部分とは、区別なく一体となつて記載されていた。また、変更計画概要書、変更計画書のいずれにも変更前の図面と変更後の図面とが添付されており、これを対比すれば、この手続中に四六年変更が含まれ、当初計画線を計画変更線に変更することをもその内容とする変更手続であることが容易に判別できた。

以上の事実が認められ、右認定に反する資料はない。

右事実によれば、五一年変更手続は適正になされ、その手続中において四六年変更に対する事後的な変更手続がなされているものと認められ、また、後記認定の四六年変更時の関係者の協議等の状況に照らすと、三条資格者は、右変更の事情を知つたうえで、これに同意したものと認めるのが相当である。

したがつて、右のような本件事情のもとでは、四六年変更部分の手続的瑕疵は治癒され、四六年変更は、手続的には適法となつたものと認むべきである。

なお、原告は、右に関し、五一年変更においては変更前後の違いが判別できず、また、四六年変更部分は三条資格者の同意の対象となつていない旨主張するが、右は、前記認定事実に照らし採用できない。

六被告は、五一年変更は内容的にも不当な点はない旨主張し、原告は、五一年変更中の四六年変更部分は内容的に違法又は不当であると主張するので、この点につき判断する。

<証拠>を総合すると、以下の事実を認めることができる。

1  昭和四三年に決定された本件改良事業の当初計画においては、当初計画線のとおりの支線農道が予定されていたが、そのころ、建設省においても、本件改良事業区域内を南北に通す国道八号線バイパスの建設計画が進められていた。

2  建設省の右計画は、昭和四五年に用地買収がなされて具体化したが、同省では、国道八号線バイパスは国道八号線に昇格させることを予定しており、また、将来は四車線道路にして中央分離帯を設置する計画であり、本格的な国道の建設を考えていた。そのため、交差点はできるだけ少なくして、交差点と交差点の間には少なくとも五〇〇メートル程度の間隔を置くこととしていた(なお、その後、右バイパスは別紙図面のとおり国道八号線に昇格した。)。

3  これに対し、地元では、国道八号線バイパスは東西に通ずる多くの農道と交差するので、交差部分をすべて平面交差とするよう要望し、右バイパスの建設による影響を受ける八ツロ、吉政、高柳の各部落とも委員を選んでその交渉にあたつた。

4  しかし、結局地元の要望は受け容れられず、別紙図面のE点(以下の各点は、いずれも同図面上の点をいう。)を地下道式立体交差とし、G点を信号機付平面交差とすることで関係者間で合意するに至つた。

5  右の結果、F点での国道八号線、バイパス横断が不可能となつた。以上のとおり、当初計画においては、右のような事態の発生を考えておらず、J点、K点、C点からは、当然F点を横断して東側の寅国部落に行くことができるものとされていたものの、これが不可能に帰した以上、計画の変更を考えざるをえなくなつた。そこで、八ツロの集落から東側土地に行くために、新たにE点を中心に八ツロ集落のJ点及び同集落から西の耕地へ連絡するK点、そして幹線農道のD点を合理的に連絡する道路として計画変更線が考えられるに至つた。

6  一方、八ツロ地区では、昭和四五年八月一日に、役員会において、建設省側の計画を受け容れざるをえないこと、その結果当初計画線を変更せざるをえないことにつき了承し、同月一九日に開かれた部落の常会においても当初計画線を計画変更線に変更することについて了承された。右により、当初計画よりも一五〇メートル弱の道路工事が新たに必要とされることになつた。

以上の各事実が認められ、<反証排斥略>、他に右認定に反する証拠はない。

右の認定事実によれば、当初計画線を計画変更線に変更する四六年変更は、十分合理的な理由と方法に基づいて行なわれたものと認められ、何ら違法、不当というべき点は存しない。

四六年変更は、右認定のとおり、国道八号線バイパスの建設に対応して、当初計画を合理的に変更したものであつて、計画全体として有益であつたものと認められるところ、原告のるる主張する不利益は、いずれも原告を中心とした事実上の主観的な不利益にすぎず、その他本件全証拠を仔細に検討してもこの点に関する被告の本件決定における判断は違法、不当なものとはいえず、正当として是認できる。

そうすると、四六年変更は、内容的にも何ら違法、不当な点はなかつたものということができる。

七以上の認定判断によれば、四六年変更部分は、内容的にも何ら違法、不当な点はなく、手続的瑕疵も治癒されたものと認められる。そして、本件の証拠を検討しても、他に五一年変更について何ら違法、不当な点は見当らないから、結局、五一年変更は全部につき適法になされたものと認めるのが相当である。

よつて、五一年変更に対する原告の異議申立てを棄却した被告の本件決定は正当である。<以下、省略>

(高橋爽一郎 園部秀穂 石井忠雄)

別紙

決定書

決定の理由

一 変更計画に対する異議申立てについて

(一) 県営土地改良事業の計画については、主要工事計画等の重要な部分を変更しようとするときに計画変更の手続を行うことになる。そして、計画変更の手続をとらなければならないか否かの判断基準としている国の行政指導である「都道府県営土地改良事業計画変更取扱要領」(昭和四二年一一月一〇日付け農地C第四四九号農林事務次官依命通達)では、農道延長の二〇パーセントに及ぶ増減または幹線農道の配置および構造の著しい変更等の場合に計画変更の手続が必要とされている。

しかし、四六年変更は、支線農道の位置、延長などの一部を変更したもの  であつて、前記の条件に該当しないため、計画変更の手続を行わなかつたものである。

なお、その後、本件土地改良事業の施行に係る地域の変更および事業費の増加等計画変更の要因を生じたので、昭和五〇年一二月一五日から同月一九日まで変更後の土地改良事業計画の概要を公告し、法第三条に定める資格を有する者の三分の二以上の同意を得て変更計画を決定したものであり、その手続に違法はない。

(二) 土地改良事業(圃場整備)における道路の配置等の計画は、事業の施行に係る地域内の農地の農産物、生産資材の運搬および耕作への利用を主目的に、その地区の諸条件を総合的に判断して樹立するものである。

ところで、四六年変更は、昭和四五年三月頃から国道の建設計画が具体化し、その構造は、国道の機能上、四車線で中央分離帯を設置する計画となつており、そのため、信号機付平面交差点または立体式交差点以外の交差は、横断が不適当となることが判明した。

そこで、国道と本件土地改良事業による道路との交差関係をどうするかについて、建設省、関係自治体および関係集落間で再三協議が行われ、その結果別紙図面のG点を信号機付平面交差、E点を地下道式立体交差することで関係者間に合意が成立した。この合意の成立により、F点での国道の横断は不適当となり、そのため、E点で国道と交差するA、E、Hの農道を国道の東にある八ツロ、寅国等の耕地と八ツロ集落および幹線農道とを結ぶ農耕上最も価値があり、かつ、交通上も安全な連絡農道とすることに決定し、八ツロ集落のJ点、同集落と同集落の西にある耕地へ連絡するK点および幹線農道のD点との連絡が合理的、効率的に行えるよう計画変更線を決定し、施行したものである。

異議申立人は、四六年変更により

ア 関係区画内の農地が細分化され変形すると主張するが、その変更によつて著しく細分化し、変形する事実は認められない。

イ 国道以東への通作距離が遠くなると主張するが、これはF点における国道の横断を前提としたものであり、前述のとおりF点の横断は不適当であるから、申立人の主張を認めることはできない。また、仮にF点の横断が可能としても、四六年変更による距離の増加は五五メートル程度であり、この程度の迂廻によつて著しい不利益になるとは考えられない。

ウ 道路延長の増加により事業費が増大すると主張するが、前述のとおり、国道計画の具体化による地域の状況の変化に対応して、道路の機能を考慮し、必要な変更を行つたものであり、必要な工事を施行するための範囲内のものである。

エ 通勤、通学等の生活道路として不便になると主張するが、土地改良事業による道路は、農業用途への利用を目的として施行するものであり、通勤、通学等生活関連用途への利用は本来その施行目的を異にするものであるから、生活道路としての利用が多少不便になつたとしても、そのことによつて不適当とすることはできない。

したがつて、異議申立人が四六年変更が不適当であることを主張して変更計画における計画変更線の取消しを求めるのは、いずれも理由がない。

二 換地計画に対する異議申立てについて

変更計画は、前記一のとおり適法かつ適当なものであるから、変更計画の取消しを前提とする換地計画に対する異議申立人の主張は、認めることができない。

以上のとおり、申立人の主張は、いずれも理由がない。

よつて、主文のとおり決定する。

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